直接請求制度について
直接請求とは
我が国の地方自治制度は、住民から選挙によって選ばれた代表者が行政を行う間接民主制が採用されています。しかし、その行政が住民の意思に反して行われようとした場合は、住民がその意思を示す手段として、直接請求が認められています。
なお、直接請求は、地方自治法に定められているもののほか、市町村の合併の特例に関する法律、地方教育行政の組織及び運営に関する法律などにも定められています。
直接請求の種類と選挙管理委員会の役割
地方自治法に定められている直接請求の種類は、下表のとおりです。
また、直接請求をするためには、地方公共団体の長及び議会議員の選挙権を有する者の一定数以上の署名を集める必要があります。この一定数は、選挙管理委員会が年4回の定時登録(3月、6月、9月及び12月)及び選挙時登録(選挙期日の告示日(公示日)の前日現在)の選挙人名簿の登録者数に基づき決定し、告示を行います。
さらに、直接請求に係る署名簿に記載された署名の有効又は無効を審査・決定すること、その結果を証明・告示すること、解散や解職の賛否投票を実施することも選挙管理委員会が行います。
【直接請求の種類・必要な署名数・請求先】
直接請求の種類 |
必要な署名数 |
請求先 |
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条例の制定・改廃の請求 (地方自治法第74条) |
選挙人名簿登録者数の50分の1以上 |
市長 |
監査の請求 (地方自治法第75条) |
監査委員 |
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議会の解散請求 (地方自治法第76条) |
選挙人名簿登録者数の3分の1以上 (選挙人名簿登録者数が40万以下の場合)
(注)選挙人名簿登録者数が40万人を超える場合等については、別に規定されています。 |
選挙管理 委員会 |
議員の解職請求 (地方自治法第80条) |
選挙管理 委員会 |
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長の解職請求 (地方自治法第81条) |
選挙管理 委員会 |
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主要公務員(副市長、選挙管理委員、監査委員等)の解職 (地方自治法第86条) |
市長 |
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教育長・教育委員の解職 (地方教育行政の組織及び運営に関する法律第8条) |
市長 |
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市町村合併協議会設置の請求 (市町村の合併の特例に関する法律第4条・第5条) |
選挙人名簿登録者数の50分の1以上 |
市長 |
市町村合併協議会設置協議を求める投票の請求 (市町村の合併の特例に関する法律第4条・第5条) |
選挙人名簿登録者数の6分の1以上 |
選挙管理 委員会 |
【署名の収集が禁止される期間】
衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の長若しくは議会議員の各選挙が行われるとき、当該選挙が行われる区域内では、一定の期間、署名の収集が禁止されます。
選挙の種類 |
禁止される期間 |
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任期満了による選挙 |
任期満了の日前60日に当たる日から選挙期日までの間(統一地方選挙の場合は、選挙期日前60日に当たる日から選挙期日までの間) |
衆議院の解散による総選挙 |
解散の日の翌日から選挙期日までの間 |
市町村の設置による長又は議会議員の選挙 |
市町村が設置された日(総務大臣の告示があった日)から選挙期日までの間 |
市町村議会議員の増員選挙 |
増員に関する議員定数の条例が施行された日から選挙期日までの間 |
その他の選挙(補欠選挙、再選挙、解散選挙等) |
選挙管理委員会が署名を求めることができなくなる旨の告示をした日の翌日から選挙期日までの間 |
無投票当選の場合は、無投票の告示がされた日以後は、署名の収集禁止が解除されます。
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直接請求の手続きについて
直接請求の手続きは、請求代表者が首長または選挙管理委員会に、該当する連署でもって請求することができます。ここでは、5種類の直接請求の手続の流れについて説明します。
1.条例制定又は改廃の請求
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の50分の1以上の連署をもって、その代表者から、地方公共団体の長に対して条例(地方税の賦課徴収、分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除きます。)の制定又は改廃の請求をすることができます。請求までの手続は以下のとおりです。
(1)請求代表者証明書の交付申請
請求代表者は、請求の要旨(1,000字以内)など必要な事項を記載した「請求書」を添え、文書により、市長に対して「請求代表者証明書」の交付を申請します。
(2)請求代表者の資格確認及び請求代表者証明書の交付
請求代表者証明書の交付申請があった場合、市長は直ちに選挙管理委員会に対し、請求代表者が選挙人名簿に登録されている者かどうか確認を求めます。請求代表者が登録されている場合は、市長は請求代表者に証明書を交付し、その旨を告示します。
(3)署名の収集
請求代表者は、署名簿に(1)の「請求書」と(2)で交付を受けた「請求代表者証明書」を添付(いずれも、原本又は写しどちらでも可)し、市の議会の議員及び長の選挙権を有する者に対し署名簿に署名押印を求めます。署名の収集期間は、市長が請求代表者証明書を交付した旨を告示した日から1か月以内(政令指定都市にあっては2か月以内)です。
また、請求代表者は、自ら署名を収集することができるほか、選挙権を有する者に委任して署名の収集をさせることもできます。委任された者が署名を収集する場合、署名簿に「請求書」及び「請求代表者証明書」に加えて「代表者の委任状」も併せて添付する必要があります。
(4)署名簿の提出
請求代表者は、署名簿を市選挙管理委員会に提出し、署名押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求めます。なお、市町村に関する請求にあっては、署名簿の提出は署名収集期間の満了の日の翌日から5日以内(都道府県又は政令指定都市に関する請求については10日以内)に行う必要があります。
(5)署名簿の審査
市選挙管理委員会は、署名簿を受理したときは、受理した日の翌日から起算して20日以内に署名簿を審査し、署名の有効又は無効を決定します。署名簿の証明終了後、市選挙管理委員会は、署名押印した者の総数及び有効署名の総数を告示するとともに、公衆の見やすい方法により掲示します。
(6)署名簿の縦覧
市選挙管理委員会は、署名簿の証明が終了した日の翌日から7日間、指定した場所において、署名簿を関係人の縦覧に供します。また、署名に関して異議がある方は、縦覧期間中に異議を申し出ることができます。市選挙管理委員会は、異議の申出を受けたときは、申出日の翌日から起算して14日以内に当該申出内容について決定した上で、修正、通知等を行います。
(7)署名簿の返付
市選挙管理委員会は、異議の申出がないとき、又は全ての異議を決定したときは、有効署名数を告示し、署名簿を請求代表者に返付します。また、返付の際には、署名簿の末尾に署名押印した者の総数並びに有効署名の総数及び無効署名の総数を記載します。
(8)本請求(直接請求)
市町村に関する請求にあっては、署名簿の返付を受けた日又はその効力が確定した日の翌日から起算して5日以内(都道府県又は政令指定都市に関する請求にあっては10日以内)に、請求書に、「有権者の総数の50分の1以上の有効署名があることを証明する書面」及び「署名簿」を添え、市長に対して条例制定(改廃)請求をします。市長は、署名簿の署名数が法定署名数以上であるか、期間内に条例制定(改廃)請求がされたどうかを審査し、受理又は不受理を決定します。受理したときは、市長はその旨を請求代表者に通知し、さらに、請求代表者の住所氏名及び請求の要旨を告示するとともに、公衆の見やすい方法によって公表します。
(9)直接請求受理後
市長は、請求を受理した日の翌日から起算して20日以内に議会を招集し、意見を付して議会に付議します。条例の制定又は改廃に係る審議の終了後、その結果は請求代表者に通知するとともに、公表されます。
2.監査の請求
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の50分の1以上の連署をもって、その代表者から地方公共団体の監査委員に対して監査の請求をすることができます。
(1)請求代表者証明書の交付申請から直接請求まで
請求代表者証明書の交付申請から直接請求までの手続の流れは、以下の点を除き、上記の「条例制定(改廃)の請求」の手続と同じです。
・請求代表者証明書の交付申請は、地方公共団体の監査委員に対して行います。
・請求代表者証明書の資格の照会及び証明書の交付は、監査委員が行います。
・直接請求は、監査委員に対して行います。また、受理又は不受理の決定、その旨の請求代表者への通知、請求代表者の住所氏名及び請求の要旨の告示並びに公衆の見やすい方法による公表も監査委員が行います。
(2)直接請求受理後
監査委員は、監査の請求があったときは、請求に係る事項を監査します。監査委員は、監査結果を請求代表者に通知し、並びに公表するとともに市議会、市長及び関係する行政委員会に提出します。
3.議会の解散請求
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の3分の1以上の連署をもって、その代表者から、地方公共団体の選挙管理委員会に対し議会の解散の請求をすることができます。ただし、当該議会議員の一般選挙又は議会の解散請求に基づく解散の住民投票が行われた日の翌日から起算して1年間は、議会の解散請求をすることはできません。
(1)請求代表者証明書の交付申請から直接請求まで
請求代表者証明書の交付申請から直接請求までの手続は、以下の点を除き、上記の「条例制定(改廃)の請求」の手続と同じです。
・請求代表者証明書の交付申請は、地方公共団体の選挙管理委員会に対して行います。
・請求代表者証明書の資格の照会及び証明書の交付は、選挙管理委員会が行います。
・直接請求は、選挙管理委員会に対して行います。また、受理又は不受理の決定、その旨の請求代表者への通知、請求代表者の住所氏名及び請求の要旨の告示並びに公衆の見やすい方法による公表は、選挙管理委員会が行います。
(2)直接請求受理後
市選挙管理委員会は、直接請求を受理したときは、直ちに請求の要旨を公表します。続いて、請求を受理した日の翌日から起算して20日以内に議会から弁明書(1,000字以内)の提出を要求します。その後、請求の要旨とともに弁明の要旨及び住民投票の投票期日等と併せて告示し、公衆の見やすい場所(投票所の入口等)に掲示します。
議会の解散の住民投票は、直接請求を受理した旨を告示した日の翌日から起算して60日以内に実施されます。なお、投票における一連の手続は、公職選挙法の規定が準用されます。
投票の結果、過半数の同意があったときは、議会は解散することになります。また、投票の結果が判明したとき及び確定したときは、市選挙管理委員会は、投票結果を公表するとともに、これを請求代表者及び市議会議長に通知し、市長に報告する必要があります。
4.議会の議員及び長の解職請求
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の3分の1以上の連署をもって、その代表者から、地方公共団体の選挙管理委員会に対して当該所属の選挙区の議会の議員又は長の解職の請求をすることができます。ただし、無投票により当選した者を除き、当該議員又は長の就職の日の翌日から起算して1年間及び解職に係る住民投票の日の翌日から起算して1年間は、解職請求を行うことができません。
(1)請求代表者証明書の交付申請から直接請求まで
請求代表者証明書の交付申請から直接請求までの手続は、以下の点を除き、上記の「議会の解散請求」の手続と同じです。
(2)直接請求受理後
住民投票は、直接請求を受理した旨を告示した日の翌日から起算して60日以内に実施されます。なお、投票における一連の手続は、公職選挙法の規定が準用されます。
投票の結果、過半数の同意があったときは、議会の当該議員又は長は、職を失うことになります。また、投票の結果が判明したとき及び確定したときは、市選挙管理委員会は、投票結果を公表するとともに、議員の解職の場合はこれを請求代表者、市議会議長及び関係議員に通知し、及び市長に報告する必要があり、長の解職の場合は市長及び市議会議長に通知する必要があります。
5.主要公務員の解職請求
地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者は、その総数の3分の1以上の連署をもって、その代表者から、地方公共団体の長に対して、副知事若しくは副市町村長、選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができます。ただし、副知事若しくは副市町村長にあっては就職の日の翌日から起算して1年間又は解職請求に関する議会の議決の日の翌日から起算して1年間、選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員にあっては就職の日の翌日から起算して6か月間又は解職請求に関する議会の議決の日の翌日から起算して6か月間は行うことができません。
また、主要公務員の解職請求では住民投票は実施されず、長が議会に付議し、当該議会において議員の3分の2以上の者の出席により、その4分の3以上の同意があったときに当該主要公務員が解職されます。
(1)請求代表者証明書の交付申請から直接請求まで
請求代表者証明書の交付申請から直接請求までの手続は、「条例制定(改廃)の請求」の手続と同じです。
(2)直接請求受理後
市長は、直接請求を受理したときは、請求を議会に付議します。審議完了後、その結果を請求代表者及び被解職請求者である関係人に通知するとともに公表します。
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更新日:2023年12月27日