○壱岐市立学校におけるハラスメントの防止等に関する指針

平成16年3月1日

教育委員会訓令第9号

1 ハラスメントに対する基本的認識

ハラスメントは、個人の尊厳及び人権を侵害する行為であり、身体的及び心理的暴力であるといえる。

また、ハラスメントは、職場秩序を乱し、就業意欲及び学習意欲の低下を招き、勤務環境及び教育環境を悪化させ、職員の働く権利並びに児童及び生徒の学ぶ権利を侵害することとなる。

特に、学校という教育の場におけるハラスメントは、大人と子供、指導する者と指導される者という関係のもとで、極めて重大な問題であり、児童及び生徒からの信頼を失うだけでなく、保護者、地域等の学校に対する信頼を著しく損ない、学校教育の推進に重大な影響を与える問題である。

したがって、ハラスメントは、個人間の問題にとどまらず、当該言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)はもとより、管理監督者にもその責任が問われるところであり、その防止に向け取り組む必要がある。

2 ハラスメントの概念

ハラスメントとは、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントのことである。セクシュアル・ハラスメントは、「職員が他の職員、児童及び生徒並びに保護者を不快にさせる性的な言動」のため、「職員の就労上又は児童及び生徒の修学上の環境が害されること」をいう。

ここでいう性的な言動とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指すが、それらだけでなく、性的な差別意識及び優越意識に基づく言動も含まれる。

また、「冗談、からかい」、「親しさの表現」、「個人的な好意」が動機であったとしても、相手方の意に反したものであれば、相手を不快にさせてしまう場合があるものとして認識する必要がある。パワー・ハラスメントは、「職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、他の職員等に対して、適正な業務や指導の範囲を超えて継続的に精神的・身体的苦痛を与える又は周囲の環境を悪化させる言動」のため、「職員の就労上又は児童及び生徒の修学上の環境が害されること」をいう。妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントは、「女性職員が妊娠又は出産したこと、妊娠又は出産に起因する症状により勤務することができないこと若しくはできなかったこと又は能率が低下したこと及び職員の妊娠、出産、育児又は介護に関する制度若しくは措置の利用に関し、勤務環境を悪化させる言動」のため、「職員の就労上の環境が害されること」をいう。

3 職員の責務

職員は、次に定めるところに従い、ハラスメントをしないよう、又は防止するように注意しなければならない。

(1) ハラスメントを行わないために職員が認識すべき事項

ア 性に関する言動に対する受け止め方には、個人間及び男女間、その人物の立場等により差があり、セクシュアル・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること。

イ パワー・ハラスメントについて、指導のつもりであったとしても、適正なレベルを超えると相手を傷つけてしまう場合があること。また、その適正なレベルは職員等一人一人異なるので、相手の立場に立った言動をとること。

ウ 妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントについて、不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の職員の妊娠、出産、育児又は介護に関する否定的な言動(当該職員に直接行わない言動(単なる自らの意思の表明を除く。)も含まれる。)及び妊娠、出産、育児又は介護に関する制度を利用したこと等により周囲の職員の業務負担が増大することも、ハラスメントの原因や背景となること。

エ 相手が拒否し、又は嫌がっていることが分かった場合には、同じ言動を決して繰り返さないこと。

オ ハラスメントを受けた者が、職場の人間関係等を考え、拒否することができないなど、相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。

カ 勤務時間外又は職場外におけるハラスメントについても十分注意する必要があること。

(2) 就労上又は修学上の適正な環境を確保するために職員が認識すべき事項

ア ハラスメントについて問題提起をする職員、児童及び生徒並びに保護者をいわゆるトラブルメーカーと見たり、ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片づけないこと。

イ ハラスメントが見受けられる場合は、注意を促し、被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。また、職場においてハラスメントがある場合には、第三者として、気持ちよく就労や修学ができる環境づくりをするために校長等に相談するなどの方法を取ることをためらわないこと。

(3) ハラスメントに起因する問題が生じた場合において職員に望まれる事項

ア 1人で我慢しているだけでは、問題は解決しないことを認識すること。

イ ハラスメントをなくすことは良好な勤務環境等の形成に重要であるとの考えに立って、嫌なことは相手に対し明確に意思表示したり、信頼できる人に相談するなど、ハラスメントに対する行動をためらわないこと。

(4) 児童及び生徒への対応

ア すべての教育活動を通じて、児童及び生徒の人権を尊重した教育の在り方を意識し、一人一人を生かす教育環境づくりに努めること。

イ 児童及び生徒が被害を受けていることを見聞きした場合には、校長等に報告するとともに、すぐに声をかけて相談に乗るなど、細心の注意を払いながら解決を図ること。

4 苦情相談への対応

ハラスメントが発生した場合のみならず未然防止のためにも、気軽に苦情相談ができる体制を整え、適切に対応していくものとする。

また、苦情相談に対応するに当たっては、ハラスメントを更に誘発するなど被害が深刻化することのないよう、被害者の立場で考え、事案に係る事実関係を迅速かつ正確に認識し、事案の内容及び状況に応じ、適正に対処する必要がある。

(1) 苦情相談を受ける体制等

ア 職員等からのハラスメントに関する苦情相談には、相談員(校長、教頭及び校長が選任する者)が窓口となること。

なお、苦情相談を受ける際には、同性の相談員を含め、原則として複数で対応すること。

また、学校内での対応が困難な苦情相談については、職員等からの直接の苦情相談も含め、委員会が窓口となり、必要に応じて助言等を行うこととする。

イ 各学校における児童及び生徒並びにその保護者からの苦情相談を受ける窓口については、各校長が新たに設けるか、既に校務分掌にある教育相談部等の職務として位置づける等、明確なものとすること。

ウ 苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者に見聞きされないよう周りから遮断した場所で行うこと。

エ 相談員の苦情相談に関する知識及び技能を向上させるための研修等の実施に努めること。

(2) 苦情相談を受ける際の基本的な心構え

ア 当事者にとって最善の解決策は何か(適切かつ効果的な対応は何か)という視点を常に持つこと。

イ 事態を悪化させないために、迅速に対応すること。

ウ 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密は厳守すること。

(3) 相談者から事実関係を聴取するに当たっての留意点

ア 相談者の求めるもの、例えば、性的な言動が継続中であり、今後も発生が見込まれる言動への対応(将来の言動の抑止等)を求めるものであるのか、又は過去にあった言動に対する対応(謝罪要求等)を問題にするものであるのかについて把握すること。

イ 対応にどの程度の時間的な余裕があるのかについて把握すること。

ウ 相談者の主張に真摯に耳を傾け、丁寧に話を聴くこと。

特に相談者が被害者の場合、ハラスメントを受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努めること。

エ 事実関係については、次の事項を把握すること。なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容については、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者がいるのかを把握すること。

(ア) 当事者(被害者及び行為者とされる者)間の関係

(イ) 問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。

(ウ) 相談者は、行為者とされる者に対してどのような対応をとったか。

オ 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。

カ 聴取した事実関係等については、必ず苦情相談記録表(別記様式)に記録して取って置くこと。

(4) 行為者とされる者からの事実関係等の聴取

ア 事実関係を把握する際は、行為者とされる者からも聴取すること。

イ 行為者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、行為者とされる者に対して十分な弁明の機会を与えて対応すること。

ウ 聴取するに当たっては、行為者とされる者の主張に真摯に耳を傾け、丁寧に話を聴くなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意点を参考にし、適切に対応すること。

(5) 第三者からの事実関係等の聴取

当事者の間の事実関係に関する主張に不一致があり、それだけでは事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第三者から事実関係等を聴取することも必要であること。この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意点を参考にし、適切に対応すること。

(6) 事実関係等の聴取後の具体的対応

ア 監督者等は、被害者や行為者とされる者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、ハラスメントの態様や緊急性の有無などを考慮しながら、事案に即した適切な対応を行うこと。

主な対応策としては、次のようなものが考えられる。

(ア) 状況等を注意深く観察する。

(イ) 行為者とされる職員に、当該職員の同僚等を通じ間接的に注意を促す。

(ウ) 行為者に、その言動がハラスメントに該当することを直接注意する。あるいは被害者に対する謝罪を促す。

(エ) 被害者に対して自分の気持ちを明確に意思表示するよう助言する。

(オ) 当事者間のあっせんを行う。

イ 苦情相談に関し具体的にとられた対応については、相談者に説明すること。

(7) 児童生徒又は保護者に係る苦情相談について

児童生徒又は保護者に係る苦情相談への対応については、上記事項に留意するとともに、当該児童生徒の心身の発達段階等を十分に考慮し、就学環境を悪化させないよう配慮すること。

この訓令は、平成16年3月1日から施行する。

(平成26年4月1日教委訓令第2号)

この訓令は、平成26年4月1日から施行する。

(令和2年12月1日教委訓令第2号)

この訓令は、令和2年12月1日から施行する。

画像

壱岐市立学校におけるハラスメントの防止等に関する指針

平成16年3月1日 教育委員会訓令第9号

(令和2年12月1日施行)

体系情報
第7編 育/第2章 学校教育
沿革情報
平成16年3月1日 教育委員会訓令第9号
平成26年4月1日 教育委員会訓令第2号
令和2年12月1日 教育委員会訓令第2号